1. 医師国家試験予備試験とは何か
医師国家試験予備試験は、海外の医学部を卒業した方などが、日本で医師免許を取得するために最初に越えなければならない関門です。
日本の医学部を卒業した方は、卒業と同時に医師国家試験の受験資格が得られます。しかし、海外の医学校を卒業した方や、海外で医師免許を取得した方の場合は、そのままでは日本の医師国家試験を受けることができません。厚生労働大臣が実施するこの予備試験に合格して初めて、次の段階へ進む道が開かれます。
つまり予備試験は、それ自体がゴールの資格試験ではなく、「日本の医師国家試験を受けるための資格を得る試験」という位置づけです。
2. 予備試験に受かっても、医師免許はまだ手に入らない
ここが、最も誤解されやすいところです。
予備試験に合格しても、その時点で医師免許が手に入るわけではありません。合格後、さらに1年以上にわたる診療および公衆衛生に関する実地修練を経て、ようやく医師国家試験の受験資格が得られます。そして、その医師国家試験に合格して、初めて医師免許が交付されます。
予備試験合格 → 1年以上の実地修練 → 医師国家試験 → 医師免許
この道のりを最初に理解しておくことは、とても大切です。予備試験は、長い階段の一段目にすぎません。だからこそ、ここで消耗しすぎず、着実に、しかし効率よく越えていく必要があります。
3. 試験は3段階に分かれている
予備試験は、大きく3つの段階で構成されています。
| 段階 |
形式 |
問われる内容 |
| 第一部試験 |
筆記 |
基礎医学 |
| 第二部試験・筆記試験 |
筆記 |
臨床医学 |
| 第二部試験・実地試験 |
口頭試問 |
臨床能力 |
重要なのは、これらが完全な段階制になっている点です。第1部試験に合格した者でなければ第2部筆記試験を受けることはできず、第2部筆記試験に合格した者でなければ実地試験に進むことはできません。
同じ年に3つすべてを突破しなければ、また翌年、第一部試験からやり直しになります。この構造が、予備試験の難しさを一段と厳しいものにしています。
4. 第一部試験(基礎医学・9教科)
第一部試験は、基礎医学を中心とした筆記試験です。
出題されるのは、解剖学、生理学、生化学、免疫学、薬理学、病理学、法医学、微生物学、衛生学といった、基礎医学と公衆衛生に関する内容です。医師国家試験本試験で問われるような臨床科目の知識が聞かれることは、ほとんどありません。
配点と合格ライン
各教科10問ずつ、1問1点で、合計90点満点。合格基準は6割ですから、
54点が一つの目標になります。
医師国家試験のような長文の臨床問題は少なく、比較的シンプルに知識を問う問題が中心です。だからこそ、範囲の広さに圧倒されず、教科ごとに淡々と得点を積み上げていく戦略が効きます。法医学や衛生学のように範囲が限られている科目から固めていくのも、よく取られる方法です。
5. 第二部筆記試験(臨床医学・12教科)
第二部の筆記試験では、臨床医学の知識が問われます。
出題科目は、内科学、小児科学、精神科学、外科学、整形外科学、産科・婦人科学、皮膚科学、泌尿器科学、耳鼻いんこう科学、眼科学、放射線科学、救急医学の12教科です。
6. 第二部実地試験(口頭試問)
最後の関門が、実地試験です。ここだけは形式がまったく異なります。
対象科目は5つ
内科学、外科学、産科・婦人科学、小児科学、救急医学。この5科目を中心に、医師として必要な基本的診療能力や臨床判断力が確認されます。
採点方式も筆記とは別物
実地試験は口頭試問形式で行われ、各科目3点満点、合計15点満点で採点されます。合格ラインは10点以上です。
ただし、ここには厳しいルールがあります。いずれか1科目でも0点を取ってしまうと、総合得点が10点以上であっても不合格になります。どれか一つでも捨てることが許されない、という設計です。
近年は難易度が上昇傾向にあるとも言われています。知識があることに加えて、それを口頭で的確に相手へ伝える力が問われるため、筆記試験とはまったく別の準備が必要になります。
7. 合格率と難易度のリアル
数字で見ると、この試験の厳しさがはっきりします。
令和6年度は117名が第一部試験を受験し、合格したのは23名でした。そして、第一部試験から第二部実地試験までをストレートで合格できるのは、およそ10%程度とされています。
一方で、予備試験を突破した先の展望は、決して暗いものではありません。予備試験経由での医師国家試験合格率は全体で69.7%(新卒78.3%、既卒50.0%)と報告されています。過去13年間の平均で見ると48.4%と、通常の医学部卒業者と比べれば低い水準ではありますが、予備試験という関門を越えた方の多くが、その先へ進んでいるのも事実です。
近年は新型コロナウイルス感染症の流行以降、受験者数が増加傾向にあります。
厳しい試験であることは間違いありません。けれど、正しい戦略と、続けられる仕組みさえあれば、越えられない壁ではないということです。
8. 制度の今後
予備試験の制度そのものにも、変化の兆しがあります。
平成30年に取りまとめられた「医師国家試験改善検討部会報告書」では、現行の医師国家試験予備試験の代替として、共用試験CBTおよびPre-CC OSCEを課すことが妥当であるという方向性が示されました。
そして実際に、
2026年の第一部試験はCBT形式で実施されました。
紙とマークシートからコンピュータ画面へ。この変化は、日々の演習環境にも影響します。普段から紙だけで学習していると、本番で画面上の操作に戸惑い、本来の力を出しきれないということが起こり得ます。画面上で問題を読み、選択し、次へ進むという一連のリズムに慣れておくことが、そのまま得点に効いてくる時代になったということです。